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性的少年 12

 次の日、1時間目が終わり、2時間目が始まる前の5分休みのことだった。休み時間が終わりに近づき、始業のチャイムが鳴ろうとしていた頃、いじめっ子の副リーダー格の多田くんが、教室の真ん中の列の、前から二番目にある僕の席にやってきた。僕は次の授業の準備をしていて、準備といっても教科書とノートやふで箱を机の上に出すくらいなんだけど、ああ多田くんが近づいてくるな、嫌だな、と思いながら平静を装っていると、おい俺は国語の教科書とノートを忘れてきたからお前のを貸せと言ってきた。僕が戸惑っていると、「ジャンケンポン!」とのこと。僕はとっさにグーを出し、多田くんはチョキを出した。そして多田くんは僕の国語の教科書とノートを持っていった。ちょうどそこでチャイムが鳴った。
  佐藤先生が入ってきて、みんなで起立してお辞儀して席につく。佐藤先生は机の上にふで箱しか出していない僕に、教科書はどうしたと聞いてきた。僕が忘れましたと答えると、じゃあ隣の子に見せてもらえと言った。親切なのかそれとも新しいいじめなのか、両隣の子が見せてきた。僕は困った。佐藤先生はそれを見ても何も言わず、隣の子たちもどちらも譲らず、結果、僕は二冊の教科書を交互に見るため左右をきょろきょろしながら授業を受けた。どんな理由をつけていじめてくるかわからないから、とりあえず不公平にならないようにどちらの教科書も平等に見た。授業が終わったあと、「きょろきょろしているのがうっとおしいんだよ」と、怒鳴ったり小突いてきた人の数は2ケタを越えた。僕はなるべくみんなの機嫌を損ねないように気をつけていたつもりだったんだけど、なるほど、そう来たか。今日もおまじないは効きそうにない。
  放課後、僕の班は今週の掃除当番ではないけれど、僕はいつものように掃除をする。僕には班や当番制のシステムは適用されない。クラスのほとんどの子が下校し、掃除当番の班の子らも帰ってしまった。出しっぱなしのほうきやちり取りを片し、焼却炉へゴミを捨てに行く。そんなこんなで僕の下校はみんなより大体三十分くらい遅い。
  疲れた体で廊下を歩き、階段を下りて下駄箱で靴をはく。やばいっ、うっかり確認しないではいてしまった。ふー。特に不快感は伝わってこない。靴が無事であることがわかる。ほっとする瞬間だ。明日の朝、上履きが無事であることを祈り、校舎を出る。帰り道、いつもひとりだ。みんなと一緒に帰ることもあるけど、僕にカバンを持たせて先に行ってしまうから結局毎日ひとりみたいなもんだ。でも今日のような、まぎれもなくひとりの下校はうれしい。荷物が軽い。最短距離で帰ることができる。それだけでうれしくなる。家に近づくにつれてうれしさはどんどん大きくなる。もうすぐ天国なのだ。僕の一日はこれからなのだ。あの先の、どこにでもあるT字路を右に曲がると公園が左手に見えて、それを横目に通り過ぎて一本目を左だ。よし、ゴール寸前だ。僕は走り出した。国語の授業で思わぬ攻撃を受けたけど、なんだかんだで今日は比較的おだやかな一日だったので、心がウキウキしている。おまじないがようやく効きだしたのなら、明日もこのまま続いてほしい。
  僕は順調にT字路を曲がり公園沿いの歩道を走る。周りの風景とすれ違う。みんな、また明日! この町に呼びかける。なんとなしに公園を見る。見なければよかった。永嶋くんがいた。



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