性的少年 6 |
その日の晩ごはんの時、僕はいつものようにお兄ちゃんを見ることができなかった。どうしても疑いの目で見てしまう。僕は知っている。お兄ちゃんは警察に捕まってもおかしくないことをしている。お兄ちゃんは知らないふりをしているのか、何食わぬ顔でご飯を食べている。テレビを観て笑っている。どうやら僕がお兄ちゃんの本をこっそり持ち出したことに気づいていない。お父さんもお母さんもお姉ちゃんも、お兄ちゃんのやっていることに気づいていない。
ごはんを食べ終え、みんなとテレビをちょっとだけ観て僕は自分の部屋に戻った。ランドセルにしまっておいた保健体育の教科書と裸の女の人がたくさん出ている本を手にしてベッドの中にもぐり、頭まで布団をかぶった。いつどこで誰が見ているともわからないから、用心に用心を重ねなきゃ。本を開いた。裸の女の人がたくさん出ているほうの本だ。暗くてよく見えないので、ちょっとだけ隙間を作って光を入れた。ページの端に「アハーン」と書いてある。なんだか動物の鳴き声みたいだ。僕は恐くなってこの本を閉じた。こんなもの持っているなんて、お兄ちゃんはなにを考えているんだ。
僕は気を取り直して保健体育の教科書を広げた。
保健体育の教科書には「男性のからだ」という章もあった。なるほど、ちんちんは別名「男性器」というのか。イラストを見てみると「陰茎」とも書いてある。ちんちんにはいろんな呼び名があるんだな。ちなみにたまきんの中身は「精巣」と呼ぶ。どれもこれも別の国の言葉みたいだ。ちんちんやたまきんとかぽこちんのほうがしっくりくる。
第七章の「赤ちゃんはどこからくるの?」によると、女版ちんちんは中に通じているようになっていて、その奥に「子宮」という赤ちゃんが入る場所があるのだと書いてある。まるで洞窟みたいだ。この「子宮」というやつの中で赤ちゃんは大きくなって生まれてくるらしい。驚いたことに、赤ちゃんはおへそから生まれてくるのではなく、なんとこの女版ちんちんから出てくるというのだ。お母さんは嘘をついていた。おへそから赤ちゃんが生まれてくるなんて、あやしいと思っていたんだ。
驚いたのはこれだけではなかった。潜り込んだベッドの中、わずかな隙間から差し照らす光だけを頼りに調べている僕の目に、子供を作る場面のイラストが飛び込んできた。なんと男の人がちんちんを女版ちんちんに入れているのだ。そのすえに子供ができるというのだ。両方とも裸だった。そのイラストの男の人と女の人はどちらも優しく目をつぶり微笑んでいた。女の人の前でちんちんを出すなんて僕にはできない。目の前で女の人の裸を見るのも恥ずかしい。しかもちんちんを女版ちんちんに入れるなんて。よくもまあこんな安らかな顔ができるもんだ。こんな恥ずかしい思いをしなきゃいけないなんて、子供を作るって大変だ。
そういえば、まだ僕が小っちゃかった頃、お母さんに「赤ちゃんてどうやってできるの?」って聞いたことがあった。お母さんは「お父さんとお母さんが仲良くしているとできるのよ」と言った。僕は弟か妹が欲しかったから、お父さんとお母さんにはもっともっと仲良くして欲しかった。お父さんがお掃除を手伝っていたり、お母さんがお父さんの大好物を作ったり、誕生日や結婚記念日を祝っているのを見て、「こりゃお兄ちゃんになる日も近いな」なんて思ったりしたものだ。今となってはいい思い出だ。僕もまだ幼かったな。赤ちゃんが女版ちんちんから出てくるなんてほんと驚きだ。
ん? 待てよ。この絵、なんかひっかかるな。うーん? なんだろう? あともうちょっとでわかりそうなんだけど、わからない。お兄ちゃんのことが心配なこともあって、この日はよく眠れなかった。




















