性的少年 1 |
どこにでもあるのどかな町。元気にはしゃぎまわる少年たち。その後ろにランドセルを6個も背負った男の子がひとり。僕だ。春も暖かで、かばん持ちのしやすい季節になったとはいえ、さすがに6個にもなると重い。
ここ何年か、僕はジャンケンで勝ったことがない。なにを出しても負ける。例えば5人でジャンケンをする。僕がパーを出して2人がグーを出し、残りの2人がチョキを出す。本当ならあいこなのでもう一度ジャンケンをしなければならないけど、僕は負けたことになっている。そしてカバンを持たされる。また、例えば2人でジャンケンをする。僕がチョキを出し相手がパーを出す。僕は勝ったのに負けたことになる。そして一方的に「約束どおりこのプリン俺のね」となる。初めて出た話題だし僕はジャンケンで勝ったのに、給食のデザートを没収される。なにも知らない人から見れば、罰ゲームのあるジャンケンをしているただの小学生に映り、なんとなくでも僕と周りの関係性を知る人であれば、「あれは罰ゲームのあるジャンケンをしているのであって、チョキよりパーのほうが強いという特別ルールがあり、お互いが納得のうえでやっているのだから、なにか聞かれた時には『そういう風に見えた』と言えばいい」という言い訳が成立する仕組みになっている。相手は手強い。相手は巧みだ。つるんだ小学生ほど頭が良くて残酷なものはない。
いま僕は5年生。このまま、ジャンケンで一勝もできずに進級し、連敗記録を止められないまま卒業するのかもしれない。とりあえず、一勝くらいはしたい。相手がパーを出した時、僕のチョキが、ちゃんとチョキとして扱われたい。
「おい!」
はっとして前をみる、みんなとの距離が広がっていた。みんなは追いかけっこしたりスキップしたり、時々ぐんと距離を稼ぐ。
「早く来いよ!」
意地悪な言い方で永嶋くんが僕に叫ぶ。
「う、うん」
僕はうねり声とも返事ともいえない声をあげる。永嶋くんはガキ大将で、6年生にもケンカで負けない。この学校の番長候補だ。たいがいの人は永嶋くんに逆らえない。僕なんてもってのほかだ。僕が逆らえる対象はいない。本当だったらジャンケンの一般的なルールをあてはめれば僕はカバンを持ってもらう側なんだ。
「あの電柱までな!」
永嶋くんが僕のほうを振り返らずに、声の大きさだけで僕に伝える。この帰り道だけで、もう3回くらい聞いたセリフだ。一応、決められた場所で形だけのジャンケンはする。お決まり通り僕が負ける。今日みたいな大人数でのかばん持ちの時は、僕は手がふさがっちゃってジャンケンができない。かばんを下ろさせてもらえない。
「よし、ジャンケンするぞ。はい、ジャンケンポン! あっ、お前、出さなかったから負けー」
手が出せないので不戦敗。まともにジャンケンをしたのは校門での最初だけだ。結果もわかっているんだし時間の無駄だからやめてほしい。でも言えない。もう少しの我慢だ。あの電柱を越えたあたりからみんなの家が近くなるので、かばんがどんどん減っていく。体が軽くなるのが気持ちいい。それが唯一の楽しみ。




















