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ヒコウボーイ 12

 「行っちゃだめだ!!」

 「お、岡崎・・・」
  「すいません、話聞いちゃいました。俺が警察行きます。俺がやったことにします」
  「岡崎、お前何言ってんだよ」
  「岡崎くん・・・。はじめまして」
  岡崎はひろしの父に、気持ちは最大限、動きは最小限の会釈で応えた。
  「俺、心打たれました。ふたりは今、悲しみを乗り越えて前に進もうとしています。感動しました。それに比べて俺は、何も考えず適当に生きてて、こんなんじゃいけないなあってずっと思ってるんだけど何していいかわからなくて。俺、目が覚めました!」
  「でも岡崎くん、これはうちの家庭の問題でもあるし」
  「そうだよ、お前に迷惑かけられねえよ。それにさっき俺がお前に罪かぶせようとしたら、一度断ってるじゃねえかよ」
  「気が変わったんだよ。人の役に立ちたいなって」
  「しかし、君のご家族に迷惑がかかるよ」
  「そんなの気にしないでください。俺、四男坊だし家のほうは大丈夫です!」
  「そういうことじゃないだろ岡崎」
  「そうだ。そういうことじゃないぞ、岡崎くん」
  「いいんです。ひろし、俺を男にしてくれよ。俺、ふたりをほっとけないよ!」
  「でも」
  「大丈夫だよ、未成年だし刑務所入ってもすぐ出て来られるだろ」
  ひろしはどう説得していいかわからず、父を見つめた。
  「負けたよ、岡崎くん。君がそこまで言うなら私たちもどうすることもできない」
  「え、ちょっと父さん。もう少し説得のしようがあるんじゃ」
  「おじさん!」
  岡崎の瞳が輝いている。とにかく生き生きとしているのだ。彼は今、悶々としている泥沼とも言える状態から、自分の生きるべき道を見出した。人はその時、否が応にも生き生きとしてしまうのかもしれない。岡崎のそれは、水を得た魚も顔負けなくらいであった。
  「そうだよな。そこまで言われたらお前の気持ち、無にできないよ。岡崎、お前にこの件、預ける!」
  「ひろし!」
  「岡崎くん、それじゃあよろしく頼むよ」
  「はい! ひろし、これ、『北斗の拳』」
  「あ、サンキュー」
  「サンキュー、岡崎くん」
  「じゃあ俺、行ってきます!」
  「じゃあな、岡崎。元気でな」
  「お前もな」
  岡崎はダイニングのドアを開けると、ひろし親子に一礼をして出て行った。
  「ちゃんと『僕がやりました』って言うんだぞー」
  「はーい!」
  玄関のほうから岡崎の声が轟いた。この家には家族だけが残った。

 ひろしと父は、思わずほくそ笑み合った。一番いい形に事が進み、ほくそ笑まずにはいられなかった。
  母もほくそ笑んでる気がした。

おわり



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