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ヒコウボーイ 7

 あの惨劇が起きてから再びリビングはひろしと母のふたりきりとなった。たかだか数十分だったが、長い時間が経ったように感じた。形はどうあれ、母と親子水いらずの時である。岡崎からマスターしておくよう命ぜられていたものの、北斗神拳が手につかず、ただ母を見つめていた。
  「何でこんなことになってしまったんだろう・・・」
  今さらながら、心底後悔した。17年間生きてきて、母親に何をしてあげられただろう。
  言うことも聞かず口答えばかりして、心配をかけた。口汚い言葉で罵ったりもした。母親にしか感じることのできない痛みも大いに負わせたに違いない。それでも自分を信じて、愛してくれた母。ひろしは今、母をとても愛おしく感じた。
  「ごめんよ、ごめんよ母さん・・・」
  親孝行したい時に親はいない、本当にそうだと感じた。整理のつかない感情が胸中に吹き荒れ、思春期と反抗期と成長期を3つも掛け持ちして、精神的にも肉体的にも忙しく生きている17歳のひろしはパニックになりそうだった。
  「これが北斗神拳伝承者の宿命かもしれない・・・」
  ひろしは己の背負う宿命の重さに押しつぶされそうになったが、
  「この悲しみを乗り越えなければ・・・。いや、乗り越えてこそ真の伝承者だ」
  腹をくくり覚悟を決めた。ひろしはひと回りもふた回りも大きくなった、と、思う。
 
  母との親子水入らずの時を過ごしていると、ダイニングのドアが開いた。
  「岡崎、早かったな。本あっ、た、か・・・?」
  目と目が合って、自然に沈黙が生まれた。それは致し方のない産物であった。「沈黙」がこの状況での一番正しいコミュニケーションだったとも言える。

 「あ、父さん。お帰り」



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