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ヒコウボーイ 6

 「ええ!? ちょっ、お前、何考えてんだよ! 無理に決まってんだろっ」
  何考えてんだよ・・・。今回、何度そう考えさせられたことか。
  「ひろし、お前バカじゃねえの? 警察なんか滅ぼせるわけないだろっ。滅ぼせたとしても自衛隊だって控えてるし、仮に自衛隊がなんとかなったにしてもその後ろには米軍が控えてるんだぞ!」
  「何だと? 北斗神拳をなめんなよ!」
  「・・・お前本気で言ってんのかよ?」
  岡崎はほとほと呆れて言い放ったが、こくりとうなずかれ、見つめられた。自信と決意に満ち溢れているひろしの目は、まっすぐに岡崎を捉えており一点の曇りもなかった。その瞳はとてつもなく純粋で、北斗神拳の伝承者としての誇りすら感じられた。「もうこれ以上引き止めるのは無理かもしれない」そう思わざるを得なかった。「こいつなら大丈夫かもしれない」根拠はないがそう思わせる何かがあった。こうとなったら自首させることは諦め、ひろしを応援するしかない。もし米軍を相手にしなければならない事態になった場合は、憲法9条を持ち出そう。しかし不安はある。
  「でもお前、完璧に北斗神拳をマスターしたわけじゃないんだろ?」
  「うん。だから、単行本を見ながら闘うよ」
  「そんなことしてたら間に合うわけねえだろっ。相手はすげえ数いるんだぞ。ページめくってるうちにやられちゃうよ」
  「そうだよな。一刻も早くマスターする必要があるよな」
  「そりゃあ、まあ」
  「よーし、そうと決まったら早く全巻集めないと」
  「持ってねえのかよっ」
  「うん、まだ1巻しか持ってない」
  「よくそれで警察と闘う気になれたな」
  「大丈夫だよ、だって北斗神拳だぜ!」
  岡崎は「架空の拳法じゃねえかよ」と言いたかったが、現実に北斗神拳をちょっとマスターしかけているひろしに言える筋合いはなく、胸にしまっておいた。
  「一刻も早くマスターしなきゃ! 岡崎、『北斗の拳』を全巻買ってきてくれっ。早く!!」
  「お、おう、わかった」
  岡崎は散乱しているひろしの母を踏まないように注意してまたいで、リビングを出ていこうとした。
  「あっ、ちょっと待って」
  「どうした?」
  「北斗神拳てさ、1巻だけでも結構あるんだよね」
  そう言ってひろしは単行本をパラパラとめくりだした。
  確かに一巻で出てくる技はたくさんあった。北斗百裂拳、北斗神拳二指真空把、岩山両斬波、北斗残悔拳、交首波顔拳、経絡秘孔の頭維・命門・北斗柔破斬、etc・・・。
  どれどれ、と、行く時は無事またげたが、戻ってくる時にひろしの母を少し踏んづけてしまった岡崎が、ひろしの隣で興味を示していた。
  「ほんとだ。結構あるな」
  「こんだけあれば1巻で何とかなりそうだなあ。ん? あ、これ、母さんに決めちゃった秘孔だ」
  「とりあえず行ってくるよ。のんきなこと言ってないで、俺が戻ってくるまでに2~3個はマスターしとけよ」
  そう言うと岡崎は古本屋へと駆け出した。



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