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ヒコウボーイ 4

 岡崎はひろしの言っていることが信じられなかった。そんなことってあり得るのか、と思いひろしを見たが、ひろしは一点を見つめ肩を落としている。
  ひろしは涙声でつぶやいた。
  「母さんの最後の言葉、『ひでぶ』だった・・・」
  岡崎は言葉を失った。さすがにひろしのことが気の毒に思えてきた。
  「俺、その、何て言っていいかわかんないけど、気持ち察するよ」
  「俺、母さんに『おまえはもう死んでいる』って言ってやれなかったっ」
  そんなことむしろ言っちゃだめだろ、と岡崎は思ったが口にはできなかった。ひろしは頭を抱え込んでしまっている。肉親を失った悲しみ、自らの手で殺めてしまったことへの罪悪感、しかもそれがふざけ半分でやった故の結末であり、後悔の念がひろしの胸に去来しているのだろう。岡崎はひろしに投げかける言葉を見出せないでいた。岡崎にとっても、またひろしにとっても、17歳の高校生が背負うには重すぎる現実があった。ひろしはおもむろに振り向き、岡崎に言った。
  「これ、お前がやったことにしてくんねえかな」
  ひろしは責任逃れを考えていただけだったようだ。
  「やだよっ。何の義理があってそこまでしなきゃいけねんだよ!」
  ごもっともだけどそこを何とか、といった顔でひろしは岡崎を見つめている。決してふざけた表情ではないのだが、その目は100円玉をちらつかせ宿題の答えを聞きに来た時と同じだった。
  「俺捕まっちゃうよ。どうしよう岡崎っ」
  真顔でひろしは岡崎に救いを求めている。ひろしは母に秘孔をついたときと同じ動作をしながら、
  「俺、ちょっとこうやっただけなのになあ。殺すつもりなんてなかったのに・・・」
  と言って、また一点を見つめた。
  「これ、きっと刑重いぞ。死体見る限り、やり方が残忍だもん。もうさ、正直に警察に」
  岡崎が自首を促した瞬間、ひろしが何かを思いつき「あっ」と声をあげた。
  「どうした?どうした、ひろし」
  ひろしは母を指さしてつぶやいた。
  「心不全・・・」
  「無理だよ。心不全てことでごまかせるわけねえだろ。どう見ても他殺体じゃねえかよ」
  「あっ! 正当防衛ってことにできないかな?」
  「正当防衛にしちゃやり過ぎだろっ。もうごまかしいようがないよこれは。自首しようよ」
  「え?」
  「自首したほうがいいって」
  「やだよっ。北斗神拳で秘孔がどうのこうのって、俺、警察にバカだと思われちゃうよ」
  「いいじゃねえかよバカだと思われるくらい・・・、あ!! それだよっ」
  岡崎が名案を思いついた。



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