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ヒコウボーイ 3

 「お邪魔しまーす」
  この状況の中に人が入って来る。この光景を見たらどう思うのだろう。全身の血の気が引くのがわかった。
  「ただでさえ貧血気味なのに・・・」
  混乱しているのか、ポイントのずれた愚痴が出た。
  「おーっす」
  ドアが開いた。岡崎の顔が瞬時に恐怖に包まれた表情と化した。
  「うあっ・・・、あぅぁ・・・」
  元気などこれっぽっちもないひろしの母の姿は、岡崎にも悲鳴にならない叫びをあげさせた。ひろしも我ながら岡崎に呼びかける言葉を見出せないでいた。しばらく続いた沈黙をひろしが破った。
  「よ、よう♪」
  ひろしは、返り血でびしょびしょの姿になりながらも精一杯気さくに岡崎を出迎えた。そこには、肉親を失った悲しさへの強がりよりも、人を殺めてしまったことをごまかそうとする醜さがあった。
  「く、首から上が、・・・ない・・・」
  腰を限界まで抜かした岡崎は立っているのがやっとだった。
  「んー、まあ、散らかってるけど、座れよ」
  岡崎は立っているのがやっとなのに、座れなかった。
  細かいことはあまり気にするなよ~、とでも言いたげにひろしは岡崎を招き入れた。うちはいつもこんな感じだけど何か? といったような顔をして。
  「お前何やってんだよっ」
  「ん? 何が?」
  ひろしはとぼけてみた。
  「何がじゃねえよっ。これだよこれっ」
  「ん? どれだよ?」
  ひろしは精一杯とぼけた。
  「これに決まってんだろ! おめえ何すっとぼけてんだよっ。これ、おばさんだろっ」
  「ん? うーん。・・・、ん?」
  言ってる意味がよくわかりませんが、といった顔で、一度肯定したかに見せかけて実はまだとぼけている、というパターンで返してみたが、やはり限界だった。
  「なあ、これお前がやったのか?」
  岡崎は少し落ち着きを取り戻し、冷静な口調で聞いてきた。
  「ん? うーん。・・・、ん?」
  限界を突破しようとしたが、「ふざけんな」と冷静に一喝され、ひろしは観念し経緯を話し始めた。ひた隠していた罪悪感が溢れ出し、許しを請うようにまくしたてた。
  「聞いてくれ岡崎。俺、俺、ほんと悪気があったわけじゃないんだよっ」
  「落ち着けって。落ち着けってひろし。何があったんだよ、言ってみろ」
  「俺さ、『北斗の拳』を読んでたんだよ」
  ひろしは床に転がっている単行本を指さし、話を続けた。
  「それでさ、俺、見よう見まねで母さんに秘孔ついたらさ、・・・、決まっちゃってさ・・・」
  「ええ!?」



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