ヒコウボーイ 2 |
ひろしは呆然となった。今まで生きてきた中で一番の呆然であったと言っても過言ではなかった。そしてこの先、これ以上呆然とすることはないだろうと思えるくらいに、ひろしは呆然とした。ひろしは今自分の目の前で起きた事象を理解できないでいた。
「・・・。か、母さん? 母さん・・・?」
首から上が吹き飛び、顔面を構成している肉、骨などの要素は半径約1.5m四方に飛び散っていた。誰の目から見ても母は呼びかけに応答できる状況ではなく、ひろしは悲鳴にならない叫びをあげた。
「こ、殺しちまった・・・。母さんを殺しちまった・・・。はぁ・・・、んあ・・・」
しばらく呼吸もままならなかった。ひろしはゴクリとつばを飲んだ。つばは、ひろしののど仏を波打たせ、胃へと流れていった。
「こ、これが、これが北斗神拳なのか?」
強度の混乱の為か、まず驚かなければならないことは二の次に、ひろしは別の角度から驚いていた。その時、家のインターホンが鳴った。
「ひろしー?」
ドア越しにひろしを呼ぶ声が聞こえてきた。
「岡崎・・・?」
時計を見ると、同じクラスで近所に住む岡崎が遊びに来る予定の時刻だった。
「まずい・・・」
ひろしはこの状況を逃れる方法を、頭をフル回転させて考えた。
居留守―――。
その場はしのげても、時間を置いて再び来られる可能性がある。何度も対応していられない。できれば一度で済ませたい。電話やメールも来るであろう。また、人はインターホンの応答がない場合、一度ドアノブに手をかけるものである。今すぐに玄関の鍵を掛けられれば良いのだが、その音が岡崎に聞こえてしまうことだろう。それにひろしはまだ高校生で、居留守の経験が豊富ではない。うまく演じ切れないかもしれない。却下。
弟のフリ―――。
「お兄ちゃんならでかけましたよ」・・・ひろしに弟はいない。ひろしは一人っ子でそれは岡崎も知っている。ふざけていると思われるのが関の山だ。何より、この切り出しに岡崎がノッてきでもしたら面倒だ。それにひろしはまだ高校生で、弟のフリをする経験が豊富ではない。したことがない。却下。
急用ができた―――。
「わりぃ、ちょっと急用ができちゃって(苦笑)」これが一番ベストかもしれない。しかし、30分も経たない前に、岡崎からの「今から行きまーす♪」のメールに「はいよー☆」と返信している手前、成功率は低いだろう。「ちょっと法事が入っちゃって(苦笑)」あながち嘘でもない。が、決定打に欠ける。却下。
10秒程でこれらのことを考えただろうか。名案が出ないなか、岡崎が動き出した。















